計1−4 地域ケアの推進〜療養病床の再編成について 1.はじめに〜療養病床再編成の背景 (1)介護療養病床の消滅 2006年6月に,医療制度改革関連法案(「健康保険法等の一部を改正する法律案」・「良質 な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案」)が,衆参両 院の可決を経て,成立・公布されました。 ○医療制度改革法案の概要(⇒別紙1) これにより,今後,「医療制度改革の基本的な考え方」に沿って, @療養病床を今後大幅に削減して介護施設等に転換させていく とともに, A療養病床入院患者の医療区分による分類に伴う診療報酬の変更が行われる こととなりました。 療養病床は全国に約38.1万床あり,医療保険でみる「医療療養病床」(25.7万床)と,介護 保険でみる「介護療養病床」(12.4万床)とに分かれています。※1 「健康保険法等の一部を改正する法律」の中では,2.医療費の適正化の総合的な推進とし て,療養病床の再編・廃止が明確に位置づけられ,平成24年3月末までには,介護療養病床 12.4万床をすべて廃止し,医療療養病床についても11万床を削減,その後は医療療養病床に 1本化され,全体で15万床になるとされています。 これにより,療養型病床全体では,現在の38万床が医療型のみの15万床となり,代わりに 老人保健施設や有料老人ホーム,ケアハウスなどの介護系施設に転換される予定(21〜25 万床)となっています。 これは,医療の必要性が必ずしも高くない患者の方が,長期にわたる療養を必要とする患 者のための病床に入院し,在院日数が長くなっている実態,すなわち「社会的入院」を是正す ることを目的としたものであり,療養病床については,医療の必要性の高い患者を受け入れる ものに限定したうえで医療保険で対応するものとし,医療の必要性の低い患者については,介 護施設,居住系サービスまたは在宅で受け止めることにしています。※2 ※1 医療型にするか,介護型にするかの選択は個々の医療機関と地域の介護施設状況によって決まっており,施 設基準に大きな差はありません。認可の人員配置基準は,看護職員の数が医療では患者4人に対して看護職員 1,介護では患者5人に対して看護職員1人となっています。もちろん医療型には診療報酬,介護型は要介護度別 の介護報酬によって報酬を得る仕組です。いずれも「病院」に併設されるものです。 1 ※2 医療の必要性の低い患者の受け皿として,できるだけすみなれた場所で,ターミナルケアや認知症のケアが行 われるよう,制度改正による介護サービスの充実が図られました。 ・地域密着型サービスの創設(小規模多機能型居宅介護,小規模特養ほか) ・介護報酬改定(特養ホームにおける入所者の重度化やターミナルケアへの取組の評価,認知症高齢者グル ープホームにおける医療連携体制の評価) ・平成18年度診療報酬改定による「在宅療養支援診療所」の創設。 (2)療養病床の医療区分 今回の医療制度改革では,療養病床の6年後の病床削減だけでなく,療養病床入院者の診 療報酬制度が改定され,従来の病院入院基本料算定の施設基準「入院患者数にあわせた看護 師等の人員配置の状況により病棟単位で定額算定する方法」から,「患者の医療の必要度に応 じた「医療区分」と「ADLの状態」によって分類し,その組み合わせにより入院料が決まる」方法 になりました。※3 医療必要度が最も低いとされる「医療区分1」の入院基本料は.. 764点または.. 885点と介護施 設よりも低い報酬で、現在の報酬の約半額程度の設定となりました。 2 ○「医療療養病棟の慢性期入院医療に係る評価について」 1. 患者の特性に応じた評価を行い、医療保険と介護保険の役割分担を明確化する観点から、 医療区分及び.. ADLの状況による区分等に基づく患者分類を用いた評価を導入し、医療の必 要性の高い患者に係る医療については評価を引き上げる一方、医療の必要性の低い患者に 係る医療については評価を引き下げる。 2. 特殊疾患療養病棟等についても、現に入院している難病患者及び障害者の医療の必要性 に配慮しつつ、医療区分及びADLの状況による区分等に基づく患者分類を用いた評価を導入 する。 ○医療区分の内容 今回新たに設定された医療の必要度とADLによる分類は,まず@医療が必要かどうかによ って3つに分類し,さらにAADLの状態により3つに分類することから,計9つの分類となります。 [療養病棟入院基本料] ADL 区分.. 3 885 点1,344 点 1,740点 ADL 区分.. 2 764 点1,344 点 1,740点 ADL 区分.. 1 764 点1,220 点 1,740点 医療区分.. 1 医療区分.. 2 医療区分.. 3 ※3 ADL(Activities of Daily Living) 人間が独立して生活するために行う,基本的かつだれもが毎日行う一連の身体的動作すべてを指す。一般的に は食事,排泄,更衣,入浴,起居,移動などの動作をいい,身体動作能力や障害の程度を測る重要な指標になって いる。 2.療養病床再編に係るサービス基盤整備計画について 今後本格化する療養病床の再編を踏まえ,各地域においては,その受け皿づくりを含めて,将 来的なニーズや社会資源の状況等に即した地域ケア体制の計画的な整備が求められていま す。 そのため,厚生労働省は,国レベルでの地域ケア体制の基本方針として「地域ケア整備指針 (仮称)」を平成18年度内を目途に作成するものとし,その中で平成19年夏から秋を目途として 都道府県が「地域ケア整備構想(仮称)」を作成することが必要とされ,国はその際の支援を行う こととしています。 そして,各都道府県の地域ケア整備構想の内容は,第4期介護保険事業支援計画(平成21年 度から23年度までの3年計画),医療計画(平成20年度から24年度までの5年計画),医療費 適正化計画(平成20年度から24年度までの5年計画)に,横断的・統一的な方針として反映さ れることになります。 3 「地域ケア整備構想(仮称)」策定のスケジュール 国都道府県.. 18年.. 7月.. 8月.. 9月.. 10 月.. 11月.. 12月.. 19年.. 1月.. 2月.. 3月 夏〜秋頃 目途 地域ケア整備指針の策定 都道府県における作業 地域ケア整備構想の策定 最終とりまとめ 地域ケアモデル プラン モデルプラン作成事業 地域ケア整備に関する研究班 中間とりまとめ ・地域ケア体制整備の基本方針 ・地域の利用見込の設定 ・療養病床の転換 ・各計画への反映 都道府県地域ケア整備構想の検討 療養病床アンケート調査 ・療養病床の概況 ・医療機関の転換意向 ・療養病床入院患者の 状態等 市町村等との調整 医療費適正 化計画 医療計画 第4期介護保険 事業支援計画・地域ケア体制整備の方針 ・各サービスの利用見込み 施設・住まい・住宅サー ビスなど ・療養病床の転換 転換プラン・相談体 制・転換支援措置・財政 影響等 ・各計画への反映 H20〜 H2.. 4H20〜 H2.. 4H21〜 H23 ○国の「地域ケア整備指針(仮称)」の策定について ◆趣旨 (1)平成18年7月21日付厚生労働省老健局地域ケア・療養病床転換推進室事務連絡.. @ 今後,療養病床の再編が本格化する中で,出来るだけ早く地域における対応方針を確立 することが重要である。 A療養病床の円滑な転換を進めるに当たっては,地域における老人保健施設等の施設サー ビスや在宅介護サービス,在宅医療,住まいなど地域におけるケア体制全般のあり方を検 討したうえで,計画的に進めることが重要である。 4 B 療養病床の再編成は,都道府県が今後策定する「医療計画」(平成20年度から),「医療 費適正化計画」(平成20年度から),「介護保険事業支援計画」(平成21年度から)に密接 に関連し,各分野において横断的に対応する必要があるため,各計画と整合性のとれた方 針を速やかに整理し,各計画に適切に反映させることが必要である。 (2)(1)の取り組みを推進する観点から @国において,地域ケア体制の整備の基本方針等を内容とする「地域ケア整備指針(仮称)」 を策定するとともに, A都道府県における「地域ケア整備構想(仮称)」の作成を支援するものとする。 ◆国の「地域ケア整備指針(仮称)」の主な内容(平成18年度中策定予定) ・地域ケア体制の整備の基本方針 (療養病床の再編成をふまえた地域ケア体制の整備の基本的な考え方を提示) ・地域のサービスニーズと利用見込みの設定について (療養病床の再編成とともに,将来的な高齢化の進展や独居世帯の増加等を踏まえたサー ビスニーズの推計,それに対応した利用見込みの設定に関する考え方を提示) ・療養病床の転換について (個別の医療機関(療養病床)の転換を進める場合に配慮すべき事項等を提示) ・各計画への反映について (「介護保険事業支援計画」「医療計画」「医療費適正化計画」へ反映させる場合に配慮す べき事項を提示) ・学識経験者等からなる研究班の設置 ・全国数箇所で都道府県との共同により地域ケアモデルプラン事業(仮称)を展開 ◆都道府県の「地域ケア整備構想(仮称)」の主な内容 (平成19年夏〜秋策定予定) ・地域ケア体制の整備の方針 (療養病床の再編成を踏まえた都道府県における地域ケア体制整備の基本的考え方を提 示) ・地域のサービスニーズについて (療養病床の再編成とともに,将来的な高齢化の進展や独居世帯等の増加を踏まえたサー ビスニーズを提示) ・各サービスの利用見込みについて (将来のサービスニーズに対応した,各サービスの利用見込みを提示) ・療養病床の転換について (療養病床の転換プランを提示) ◎都道府県は「地域ケア整備構想(仮称)」をふまえ,「介護保険事業支援計画」,「医療計画」, 「医療費適正化計画」を策定する。 5 3療養病床の転換支援について (1)介護保険サイドの転換支援措置 介護療養病床を老人保健施設等に転換することを,市町村が必要と判断した場合には,地域 介護・福祉空間整備等交付金の「市町村交付金」を活用できるようになります。 ※介護療養型医療施設転換に係る市町村交付金 (平成23年度までの6年間の支援) 市町村(特別区を含む)は, @市町村全域を単位として.. A毎年度 B市町村が関与して実施する既存の介護療養病床 の老人保健施設やケアハウス等への転換を内容とする「介護療養型医療施設転換整備 計画」を策定することができる。 ○介護療養型医療施設転換整備事業 交付金の交付対象は,以下の@からFまでの施設に転換を行うための整備に要する経費 ・介護療養型医療施設 (療養病床を有する病院,老人性認知症疾患療養病床を有する病院,療養病床を有す る診療所) ↓転換 ・@老人保健施設AケアハウスB有料老人ホームC特別養護老人ホーム及び併設される ショートステイ用居室D認知症高齢者グループホームE小規模多機能型居宅介護事業 所F生活支援ハウス ※参考資料 「老健施設,終末期も対応〜厚労省方針療養病床転換を促す」 2007年4月15日朝日新聞1面記事 (2)医療保険サイドの転換支援措置 医療保険制度上の病床転換助成事業として,都道府県を実施主体とし,医療療養病床等 の長期入院病床を老人保健施設等に転換するための費用の一部を助成するものです。助 成対象範囲としては,法律上,病床の種別のうち「厚生労働省で定めるもの」の病床数を減 少させるとともに,介護保険施設その他「厚生労働省令で定める施設」の新設,または,増 設により,病床の減少数に相当する数の範囲内において入所定員を増加することとしていま す。 平成20年度から24年度の第1期医療費適正化計画の期間においては,転換先の病床と して「医療療養病床」を定め,転換先の施設として「老人保健施設」のほか,「有料老人ホー ム」や「ケアハウス」,「認知症高齢者グループホーム」を助成の対象に加える方針です。(実 際には,転換先の大半が老人保健施設になることを想定している。) なお,転換・整備の方法としては,改修による転換のほか,新規の建て替えによる整備も 対象にしています。 6